高度なコーティング技術を用いた製造業では、真空システムが非常に重要な役割を担っています。真空システムでわずかなトラブルが発生しただけでも、生産ライン全体の停止や生産計画への影響につながる可能性があります。
先日、ULVAC Vietnamは、大手製造企業のお客様から緊急の技術サポート依頼を受けました。
約12か月間稼働していたULVAC GLD-N280油回転式真空ポンプにトラブルが発生したためです。
ULVAC Vietnamのサービスエンジニアは、すぐにお客様の工場へ訪問し、設備の現場調査と詳細な点検を実施しました。
その結果、トラブルの根本原因を特定し、故障の修復だけでなく、再発防止まで含めた総合的な改善対策を提案・実施しました。
1. トラブル発生状況:設備が発した「異常のサイン」
ULVACのエンジニアが現場に到着した時、GLD-N280真空ポンプは非常にリスクの高い状態にありました。
● 異常な振動と騒音
真空ポンプから通常とは異なる異音が発生し、強い振動も確認されました。
さらに、設備は**機械的な固着(ポンプ固着)**を繰り返していました。
● 潜在的なオイル損失
オイルサイトグラスでは、ポンプオイルの液面が標準範囲内にあるように見えていました。
しかし、ポンプ上部のオイルミストフィルターには大量のオイルが滞留していることが確認されました。
このオイルは定期的に排出・回収されておらず、ポンプ内部へ適切に戻っていない状態でした。
● 圧力値の確認
圧力計では、-0.094 MPa ~ -0.1 MPa の値が確認されました。
この圧力値は生産ラインの要求仕様を満たしていたため、お客様は「真空ポンプは正常に稼働している」と判断していました。
しかし、圧力値だけでは真空ポンプや真空システム全体の健全性を判断することはできません。
2. ポンプ内部を分解:モーターが完全に焼損
機械的な固着が深刻であることを確認したため、ULVACのエンジニアは現場で設備を分解し、内部の状態を詳細に調査しました。
その結果、技術スタッフも驚くような重大な損傷が確認されました。
① モーターの完全焼損
2つのポンプユニットの電動モーターがともに完全に焼損していました。
モーターは完全に固着しており、負荷がかかった状態では起動することができませんでした。
② 内部部品の酸化・堆積物
ポンプ内部の金属表面には、著しい酸化が確認されました。
さらに、汚れや接着剤などの蒸気・残留物が内部に入り込み、厚い堆積物となっていました。
この堆積物がポンプの回転運動を大きく妨げ、機械的な負荷を増加させていました。
3. 技術分析:正確な診断で根本原因を特定
ULVAC Vietnamのエンジニアチームは、現場での経験と詳細な点検結果をもとに、トラブルが発生するまでの一連のプロセスを分析しました。
その結果、以下の3つの要因が連鎖して故障につながったと判断しました。
原因1:ポンプオイルの減少
運転中、オイルが気体とともに運ばれ、オイルミストフィルターに滞留していました。
しかし、滞留したオイルが定期的に排出・循環されていなかったため、時間の経過とともにポンプ内部のオイル量が徐々に減少しました。
その結果、ポンプ内部の潤滑性能が低下し、内部部品への負荷が増加しました。
原因2:ポンプオイルの劣化
水分や汚れがポンプ内部へ侵入することで、ポンプオイルが希釈され、酸化していました。
オイルの状態が悪化すると、潤滑性能が低下します。
その結果、ポンプ内部の摩擦が増加し、運転温度も上昇します。
原因3:長時間の過負荷運転【決定的な要因】
**Chamberまたは真空配管に微小なリーク(真空漏れ)**が発生していた可能性がありました。
そのため、真空ポンプは高い圧力領域で長時間連続運転を続ける必要がありました。
結果として、モーターには長時間にわたって大きな負荷がかかっていました。
さらに、ポンプ内部に堆積した汚れや酸化物が回転を妨げることで状況はさらに悪化しました。
最終的に、
ポンプの機械的固着 → 負荷増大 → 温度上昇 → 過熱 → モーター焼損
という故障につながりました。
4. ULVAC Vietnamによる徹底した修理・改善対策
生産ラインをできるだけ早く復旧させるため、ULVAC Vietnamでは2段階の対策を実施しました。
第1段階:緊急修理・トラブル対応
まず、故障した真空ポンプを復旧させるため、以下の作業を実施しました。
- オイルミストフィルターに滞留していた大量のオイルを完全に排出
- ポンプ内部を分解し、徹底的なクリーニングを実施
- 内部に付着した汚れや酸化物を除去
- 純正の新品モーターへ交換
- 必要な補助部品・関連部品を修復・交換
これにより、故障したGLD-N280真空ポンプの復旧を行いました。
第2段階:システム改善 ― トラブル再発リスクを低減
ULVAC Vietnamが重視したのは、単に故障した部品を修理することだけではありません。
同じトラブルが再び発生することを防ぐため、真空システム全体の改善をお客様に提案し、実施しました。
① オイルリターンラインの設置 
オイルミストフィルターに滞留したオイルをポンプへ戻すため、オイルリターンラインを新たに設置しました。
具体的には、SMC AMV3-10からGLD-N280本体へ直接接続する配管を設計・設置しました。
これにより、フィルターに滞留したオイルをポンプへ戻し、ポンプオイル不足のリスクを低減します。
② 専用装置による真空リーク検査
真空システムのリークを確認するため、ULVACの**Helium Leak Detector(ヘリウムリークディテクター)**を使用しました。
Chamberおよび真空配管全体を検査することで、目視や通常の圧力確認だけでは発見が難しい微小な真空漏れの特定を行いました。
真空漏れを早期に発見・修正することで、真空ポンプが長時間高負荷で運転されるリスクを低減できます。
③ Taiseiオイルフィルターの導入
さらに、ポンプオイルの状態を改善するため、Taisei製オイルフィルターを導入しました。
このフィルターによって、オイルがポンプへ戻る前に水分を分離します。
これにより、ポンプオイルの粘度を適切な状態に維持し、ポンプ内部の酸化リスクを低減します。
結果として、真空ポンプ内部の部品をより良好な状態に保つことができます。
④ PLC・HMIプログラムの改善
設備の制御システムについても、PLCおよびHMIのプログラムを改善しました。
新たにポンプ保護用の制御ロジックを追加し、異常状態を早期に検知できるようにしました。
具体的には、
- ポンプ起動後、システムが15秒間圧力を監視
- 圧力が
-0.1 MPaに到達しない場合、HMIにNGアラームを表示 - アラーム発生後、システムがポンプを自動停止
- 大きな真空漏れやポンプ固着などの異常を早期検知
- ポンプの長時間高負荷運転を防止し、モーター焼損のリスクを低減
この保護機能により、異常が発生した際にポンプを無理に運転し続けることを防止できます。
5. 点検・サポート後に得られた効果
ULVAC Vietnamによる迅速な技術サポートにより、お客様の工場では設備を安定した状態へ復旧することができました。
さらに、今回の改善によって、長期的なメンテナンスコストの最適化にもつながりました。
お客様の工場では、以下のような新しいメンテナンス基準を設定しました。
● 週1回のオイルレベル確認
ポンプオイルの液面を定期的に確認し、オイル不足が発生していないかチェックします。
● 3か月ごとの定期オイル交換
ポンプの安定稼働を維持するため、3か月ごとにポンプオイルを交換します。
● 専用オイル「ULVOIL」の使用
ULVAC真空ポンプには、適切な性能を維持するため、ULVOILの使用を推奨しています。
これらの対策により、お客様はGLD-N280真空ポンプをより適切に管理・保護できるようになりました。
また、真空システム全体の状態を継続的に監視することで、生産中に重大なトラブルが発生するリスクの低減にもつながります。
真空システムのトラブルでお困りではありませんか?
小さな異常を放置すると、生産ライン全体の停止につながる可能性があります。
ULVAC Vietnamでは、真空ポンプの修理・メンテナンスだけでなく、真空漏れ検査、ポンプオイル管理、真空配管、PLC・HMI制御など、真空システム全体を対象とした技術サポートを提供しています。
工場の真空ポンプに異音・振動・過熱・固着・真空到達時間の悪化などの異常が発生している場合は、ぜひULVAC Vietnamへご相談ください。
ULVAC Vietnamの技術エンジニアが現場を調査し、設備の状態に合わせた最適な技術ソリューションをご提案します。
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